土曜日

3年で辞めさせない リセット転職を防ぐ上司と会社

「石の上にも3年」は、とっくに死語。 入社3年以内に35%が退職する若年退職時代だ。
「辛抱足りん」と嘆くのは簡単。では、どうやって引き留めます? (AERA編集部 伊東武彦、伊藤隆太郎)

「うちの会社も、やっぱり……」

 東京の大手マーケティング会社インテージの人事部リーダー小牧雅さん(44)が、新卒で入社した社員の離職率のデータをパソコンに打ち込んだのは昨年5月のことだ。

 前年度の社員の意識調査で「将来が不安」「キャリアパスが見えない」といった若手の回答が目につき、計算してみると、20代前半の離職は少しずつ増えていた。

 2005年11月、西東京市にあった社屋を都心に移した。職場で自由に席を選べる「フリーアドレス」制を導入すると、コミュニケーション能力にばらつきが見られるようになった。

 マネジャーはいわゆるプレーイングマネジャーで、拡大する業務に忙殺されている。01年に成果主義を導入した段階で、階層別の研修も休止していた。

 3年前の03年に入社した26人のうち、今年度中に5人が辞める。世間のデータに比べれば比率は低いが、40歳の部長からは「マネジメントのプロが足りないのではないか」と指摘された。

 「中途入社が増えたこともありますが、転職ブームの影響も出てきたのかなあ、と。もともと採用段階で志望者の志向性が強く、人間関係もいい。転職の文化がない会社なのですが……」


 リクルートワークスによると、07年春の大学新卒者向け求人数は、バブル期に迫る82.5万人。就職希望者1人に対する有効求人倍率も昨年の1.6倍から1.89倍にアップしたが、企業のターゲットは、いまや新卒だけではない。活況に沸く売り手市場で、25歳までに一度社会人を経験した第2新卒がますます勢いづいている。

 第2新卒ブームは、バブル期とITバブル期に続いて3回目。03年から本格化した。第2新卒という場合、従来は27歳くらいまでだったが、新卒の取り逃がしでできた空席を「準新卒」で埋めたいという企業の思惑が、年齢枠を押し下げている。3年持たずにリセットボタンを押したい若者が、その大波に乗るという構図だ。首都圏に約19万人いるホワイトカラーの転職希望者のうち、約2万5000人が第2新卒だという。


 昨年9月に光文社から出た新書『若者はなぜ3年で辞めるのか?』(城繁幸著)は、年功序列のピラミッドの中で、若手社員が抱える閉塞感の要因を探った。帯には「仕事がつまらない。先が見えない」。5カ月で37万部が売れた。

 新入社員に早々に辞められては、企業にとって大きな損失になる。試算では大卒新入社員が3年で退職した場合の損失は1600万円にも膨らむ。そればかりか、辞めさせるほど人材会社がもうかる市場構造ができているという指摘もある。「リセット退職」を防ぐ手だてとは何なのか。

朝日新聞 - 2007年3月7日
ラベル: 転職、リセット退職


masahiro さんの投稿 @ 16:20

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