火曜日

『芸術企業論』著者:村上隆

逢坂ユリさん  資産運用コンサルタント
あいさか・ゆり=ニューヨーク大学卒。

大手外資系金融機関を渡り歩き、資金調達から運用、外国為替カスタマー・ディーラー、債券セールスなどを経験。05年に独立・起業し、幅広く活躍。執筆・講演活動にも積極的で近著に『夢をかなえる投資塾』(かんき出版)がある。

 約10年前、ある日突然元気だった父が病に倒れ、ほぼ同時期に要介護になった祖父、その二人の世話をする母?この3人の医療費や生活費の面倒を見ることになった私は将来への経済的な不安で思考停止になりそうでした。

 当時、月給20万円の普通のOLだったのですが「このままでは破綻する・・・」と所得倍増計画を思いつき転職を決意。

 毎晩夜中まで金融・経済などの専門書を読み漁り、難関を乗り越え外資系金融機関へ転職。ところが想像以上にノルマの厳しい外資系の営業職は心身ともに疲労がたまる日々。

 そこで週末は自己啓発関連の書籍をむさぼるように読み漁って本に叱咤激励してもらいました。

 ハードな仕事の重圧や人間関係で落ち込んでいる時に助けてくれたのは多くの本でした。毎週土曜の午前中、まだ静かな書店さんに足を運び、タイトルに惹かれて一度に10冊以上の本をまとめて大人買いをし、足湯をしながら、一人でゆっくり読書にふけるという生活を何年も続けてきました。

 沢山の本との出会いのおかげで、私はいつも夢をあきらめずに、前向きに走ってこられたのです。

 2年前のスマトラ沖地震発生の際にその場にいながら命拾いをしたのですが、それも本のおかげです。タイのプーケットのビーチで読書をしていたらうっかり転寝をして、目が覚めた時には全身火傷状態。

 そのまま丘の上の病院に運ばれ点滴をされているときに、あの恐ろしい津波が発生したのです。読書をしていなかったら間違いなく今の私は存在しないのです。

 「生かされている」ことの喜びと感謝の気持ちから一念発起し、今度は自分が一人でも多くの方に元気になってもらえる本を書きたいという新たな夢を抱きました。

 昨年1年間でこれまでの自分自身の投資経験や外資系企業で培ったキャリア・アップなどのテーマで4冊を上梓させていただきました。

 また年間100回を超える講演活動もこなし多くの読者の方と直接お目にかかれる機会が楽しくて嬉しくて仕方ありません。今春からは日経CNBCの金融・経済の新番組「夜エキスプレス」でのレギュラー・コメンテーターとして出演予定です。

 さて、今回ご紹介する本は、今や世界でもっとも有名な日本人の現代アート作家の村上隆氏の「芸術起業論」(幻冬舎)です。

 私は3歳の頃からピアノを学び、一時は音楽家を目指してフランスまで留学までしたのですが、挫折を味わい金融業界へのキャリアチェンジを決意してニューヨーク大学に留学。私も夢をかなえるために海外では悲惨な赤貧生活を送った経験があります。

 この本はアカデミックな美術論や、はやりの起業をテーマにした本ではありません。「世界のムラカミ」も、ほんの数年前、彼が36歳までコンビニのゴミ箱から賞味期限が切れたお弁当を漁っていた日々があったそうです。

 彼曰く、自分の「好き」や「やりがい」だけでは絵を描き続けられないと。自分をいかにセルフ・プロデュースしてブランド価値を上げ、作品をどの市場でPR展開し、どういうマーケティング戦略をとっていくかが大事だと主張。

 いい作品を作り続けるには、つまり夢の実現のためにはお金が必要で、アーティストもお金のつくり方を知っておくべきだと。

 ルイ・ヴィトンと共同制作をして大成功したり、ほんの数年で作品の価値が数百倍まで上がり、1作品1億円という値段がついて話題になったり。

 作家が「お金」のことを口にするのはご法度とされてきた常識を破り、アートの世界にも営業のセンス、ビジネス・パーソンとしてのプレゼンテーション能力が必要と説く本書は是非、絵には関心のない人にもお奨めの1冊です。成功するにはとにかく不屈の努力が必要だとバッサリ。彼の仕事への熱い情熱とプロ意識はきっと刺激になるでしょう。

出版社:幻冬舎
書名:芸術起業論
著者:村上隆
定価:1,680円(税込み)
ラベル: 転職、逢坂ユリ


masahiro さんの投稿 @ 14:29

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